グループ展/小金井シャトー2F
2014年05月21日(水)~2014年06月01日(日)
太田遼・箕輪亜希子・武政朋子による展示
「虚無より愛をこめて」
展覧会タイトルは伊藤計劃の同名短編からの引用です。
物語は意識の欠落した人物、“虚無”によって書かれたテキストという体裁になっています。
この中で、人はその行動の大半を無意識のうちに行うことができるとする研究結果が示唆され、その説明として脳のとある話が持ち出されます。
それは、本来処理速度もばらばらである視覚や痛覚などあらゆる感覚を、あたかも統合された瞬間として脳が『今現在』を作り上げている、
そのように錯覚させているものが、私たちが『意識』と呼んでいるものなのだと。
そうであるならば、日々私たちが目にしているモノたちは果たして信憑性のあるものなのでしょうか。
この疑問は今回の3人に共通する問題であるように思われます。
現実の場所に部分的にフェイクを挿入し、実と虚、内と外などの両義性を求める太田の空間。
視覚や認識のズレ、すきまを平面上の層の中に組みこむ武政の絵画。
モノの輪郭を疑いつつ、その解体と再生を繰り返す映像を使った箕輪のインスタレーション。
そしてそれぞれの作品は、その先に一体何を見るのでしょうか。
物語終盤、「その先」を見た“意識”は、皮肉をもって日記帳にこう記します。
『世界は充分ではなかった( ワールド ワズ ノット イナフ )。』
Six colors
〝あれはいつの日だったのだろう。育った土地の景色の中。平地の向こうに見える山々が、日が暮れる少し前に距離を失うように見えたのは。
そこに失われる前の距離が存在しているのはわかっているのに私にはもうそれを証明する術は無い。〟
撮影:椎木静寧