窓を照らす夕暮れの色がなんだか印象的だったので、色々終えてから自転車に乗ってぼんやり走ってみた。
暗くなるまでの十数分、空を見上げながら自転車をこぐのは危なかったけど、いい時間だった。
何時ぞや美術館や図録で見たような絵画に出てくる空と、時代も国も違うのに同じ色調の雲があるなあ、とか、あの微妙な明度差は絵の具では難しいなあ、
とか、筆でつくるマチエールのように見える雲だなあとか考えていたから、だいぶ間抜け面で自転車をこいでいたことだろう。職質されなくて良かった。
夕暮れだというのに高い気温と湿気、どこかの夕飯の準備の匂い、すれ違う高校生のカップル、小学校の体育館で練習する何かのスポーツチームの声。
視覚では夏の夕暮れの空を追っていても、多角的な情報が入って来て、自分は身体を使って自転車をこぐ。
頭の中ではとりとめもないことが浮かんでは消えていく。
はっきりとした同じような具体例は無いはずなのに、どこか郷愁を感じる勝手な感情。
同時に起こるたくさんのことを、今日の夕暮れの空の風景に押し込めて、記憶の中に組み込んでいく。
美しかったというようなことでもなく、ただ、そんな空だった、ということ。
明日から8月。